私は女性映画を作るべきだとはっきり意識しています。——楊荔鈉

楊荔鈉

楊荔鈉(ヤン・リーナー)は感性の人である。中国のドキュメンタリー監督は、一人で制作もプロデュースもこなさなければならないことが多いので、わりと計画性があって、計算高い人が多い。彼女の場合は、ドキュメンタリー出身でありながら、どちらかというと閃きで動く人で、かなりマイペース。着眼点もとても独特である。そんな彼女に、制作方法や今後の展望についてインタビューしてみた。

 

——日本では3ヶ所(SKIPシティ国際Dシネマ映画祭、中国インディペンデント映画祭、大阪アジアン映画祭)で『春夢』を上映したわけですが、どんな印象でしたか。

私が聞いた限りでは、評判は良かったようです。好きだと言ってくれた人も多かった。「夢」というのは誰にとっても身近なテーマですし、仏教や幽霊といったものも、日本と文化的に共通する所があるのでしょう。ただ一方では、このような物語は日本ではなかなか成立しないという声もありました。日本の主婦は忙しくて、この主人公のように夢を見ている暇なんてないと言うのです。面白かったですね。

女性の声を代表していると感じてくれた人も多かったです。中国が発展する中で存在するいろいろな問題を伺うことができるとも言ってもらえました。

好きだという人がとても多いので、配給できないものか期待したんですが、難しいようですね。

——どこも配給はついていないのですか。

『春夢』がまだ今のバージョンではなかった時、フランスの配給会社が買いたいと言って来て、契約書を作るところまでいきました。でも、編集の人が「本当にこのバージョンでいいんですか?」と聞くんです。彼の言葉を借りると、このバージョンは情色(エロティック)版で、東アジアの女性がどんな風に妄想したり、性的関係を持つかがクローズアップされた内容でした。私は彼のアドバイスももっともだと思い、編集し直したんです。でも、配給会社は新たなバージョンを受け入れませんでした。

それはそれで仕方のない事です。私だってエロ映画を作るつもりはありませんし、現在のものが本来の『春夢』だと思っていますから、残念だとも思いません。

『春夢』の編集は2年以上かかったんです。撮影は20日で終わったんですが、その後2年かけて撮り足していきました。そもそも、脚本が無かったのが良くなかったんです。

当初、脚本2枚で撮り始めたんです。撮影監督の王敏(ワン・ミン)は『鬼が来た!』(2000)や『キープ・クール』(1997)で撮影をした人で、日本で学んだ人でもあるんですが、彼が脚本なしでは撮り様がないと言うので、それではと私が2枚だけ書いたんです。彼はずいぶん喜んでいました(笑)。

なので、この映画は即興性が強いんです。俳優も、まったく台詞が用意されていませんでしたから。私だけがはっきりしたイメージを持っていて、それ以外のスタッフはすべて私を信頼してついて来てくれました。

——台本無しで、俳優はどうやって演技するんですか。

例えばあるシーンで、私がこの場面は大体こんな感じだと説明します。特にリハーサルもせず撮り始め、だいたい5カット以内、ほとんどは3カット以内でOKでした。私は俳優の即興が好きなので、後になって完成された演技が出てきたとしても、それは私の望むものとは違うんです。感情が十分に出ていればOKです。

俳優が良かったというのもあります。私が何を望んでいるか、ちゃんと理解してくれましたから。