「猂達罕映像」の挑戦。顧桃監督、フフホト市で自主上映組織を主宰。

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ドキュメンタリー映画監督の顧桃(グー・タオ)が、内モンゴル自治区のフフホト市でインディペンデント映画の自主上映組織「猂達罕(ハンダハン)映像」を今年4月から始めている(ハンダハンとはヘラジカを指す満州語)。

猂達罕映像は月1回のペースで上映イベントを開催しており、第1回と第2回は、自身が監督した『オルグヤ、オルグヤ…』『雨果(ユィグオ)の休暇』『最後のハンダハン』をフフホト民族美術館で、第3回は胡新宇(フー・シンユー)監督の『男人(原題)』を市内のバーで上映した。毎回上映後に監督との質疑応答があり、監督以外にも数名のゲストが来場している。こうしたインディペンデント映画の定期上映会は内モンゴル自治区では初めてのことで、初回には地元のテレビ局が4社も取材に訪れるなど、大変注目を集めている。

ここ数年、政府による圧力で中国国内のインディペンデント映画祭はほとんどが中止に追い込まれているが、地方都市にあってはこうした上映組織はむしろ増加傾向にあり、昨年以降では山東省の済南、湖南省の長沙、海南島の海口でも新たな組織が生まれている。 特に政治的な作品を上映していないこともあってか、当局からも制限を受けていないようだ。ただし、あくまで映画館ではなくカフェやバーなどでの無料上映である。また、上映許可証のことで問題が起こりやすい劇映画ではなく、ドキュメンタリーを上映することが多い。

猂達罕映像も、現時点ではドキュメンタリーを無料上映しているだけである。宣伝も口コミが中心で、観客は事前申し込みが必要だ。そのためか、通常だとこうした上映会の観客は大半が学生など20代であるのに対し、猂達罕映像の客層は中高年がほとんどである。

第3回の上映会は6月28日(土)の午後、フフホト市のほぼ中心街にある朵蘭戈爾・堡という名のバーで行われた。バーは通常夜からしか営業していないため、このイベントのために会場を提供している形である。この日のためにプロジェクターの設置や簡単な改修工事もされたということで、バーもかなり手間をかけている。

ゲストは『男人』の胡新宇監督、栗憲庭電影基金の王宏偉(ワン・ホンウェイ)、私こと中国インディペンデント映画祭代表の中山も登壇した。ホストとして顧桃も参加している。ちなみに胡新宇は賈樟柯(ジャ・ジャンクー)監督の映画『プラットホーム』の撮影に参加しており、王宏偉とはそれ 以来の間柄である。

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この日の観客は全部で40名ほど。これまでの2回に比べてやや少ない。多くは過去2回の上映を観に来ている人である。上映が終わると、胡新宇監督が登壇してQ&Aが行われた。インディペンデントのドキュメンタリー作品を見慣れていない観客が多いためか、質問には「言葉遣いが汚すぎる。こういう場面はもう少しカットしたほうがいい」とか「タイトルが『男人』だが、登場人物が男性を代表しているとはとても言いがたい。タイトルを変えた方がいい」といった官僚的な意見が多かったのが印象的だった。

Q&Aが終わると、残った観客も一緒にバーの大部屋に移動し、ワインの無料試飲会を兼ねた懇談会となった。バーならではとも言えるが、通常こうした上映会では若い観客が中心なので、富裕層を意識したかのようなこうしたイベントは異例で、インディペンデント映画というものがまるで知られていないフフホトならではいう感じもする。

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