邱炯炯監督、電子雑誌『電影作者』最新号を編集。雑誌作りは「江湖の道義」。
『電影作者』は2012年からこれまで6号発行されているPDF形式の電子雑誌で、インディペンデント映画の作家たちによって編集、発行されている。作家たちが自ら書いた文章や詩、写真、インディペンデント映画に関わる人々が寄せた文章やインタビューなど豊富な内容が100ページ以上にわたって掲載されており、ネットにアップされた雑誌は誰でも自由にダウンロードして読むことが可能。編集は毎回違う人が行っているということで、今月1日に発行された第6号を編集した邱炯炯(チュウ・ジョンジョン)監督に、雑誌を作るに至った経緯や思いを語ってもらった。
——邱監督は『電影作者』に創刊当時から関わってるんですよね。
ええ。ちょうど今から2年前の端午節のころ、雲之南紀録影像展(雲南省で2年に1度開催されているドキュメンタリー映画祭)の易思成たちが、湖南省にある毛晨雨(ドキュメンタリー作家、代表作『細毛家の宇宙』等)の故郷にドキュメンタリー映画の監督や評論家を集めてワークショップをするという企画をしたことがありました。私もそれに参加して、7日間にわたって毎日討論をしたり、毛晨雨の農場で農作業をしたりしました。
そのとき映画批評について話し合ったことがあったのですが、その中で映画作家たちで文章を出しあい、雑誌を刊行してはどうかという話になったんです。映画では描ききれなかったことや、背景にあることなど、作家たちには伝えたいことがいろいろあります。それに、作家たちが集まって映画以外のものを作るということも魅力的でした。私は画家でもあり映画作家でもあるので、更に他のことをするのはややアイデンティティの分裂と言えなくもないですが、自分の創作の刺激になるし、いい機会だと思いました。私にとっては、何より創作をし続けることが重要なので、そのモチベーションを保つためにもこうした刺激は良いんです。
毎号1人ずつが編集を担当することになり、毛晨雨、叢峰、林鑫、馬莉、黎小鋒と私が順番にやることに決まりました。今回でちょうど一巡したことになります。これから先の担当者は決まっていませんが、新しい人がやることになるでしょう。
——内容に関してはみんなで打ち合わせをするのですか。
いえ、テーマや誰に執筆を頼むかも含めて、それぞれ担当者に任されています。毛晨雨や叢峰たちは編集から版組みまですべて一人でやったようですが、私は時間がなかったし、とても一人ではできないので、ボランティアで手伝ってくれる人に頼んで手分けしてやりました。内容も毛晨雨たちが作ったものとはだいぶ異なります。執筆者たちには自由に書いてもらい、こちらは誤字を直すくらいで、まったく手を加えていません。
今回は上映に関わっている人たちにも書いてもらっています。ちょうど東京での映画祭に参加したばかりだったこともあって、面白い例だと思ったので中山さんにも書いてもらったわけですけど、他にも何人かが書いてくれました。本当は雲之南の易思成と重慶民間映画交流展をやっている応亮にも書いてもらいたかったんです。2つとも国内ではとても重要な映画祭だし、どちらも去年開催を断念せざるを得なかったという共通点があります。ただ、彼らが忙しかったりして、叶いませんでしたが。
——第6号が今月1日に出たばかりですが、何か反応はありましたか。
私は繁体字が好きなので、今回も繁体字で作っているんです。原稿は簡体字でもらうものが多いんですが、ソフトを使えば一発で変換できます。ただ、必ずしも正確には変換できないんです。第6号を配信後、読者のある香港人が、変換に間違いが多いから修正してくれると名乗り出てくれました。もうすぐ修正版を配信する予定です。こういう反響は手応えを感じます。また、これまでの6号をまとめて出版をする話もあって、今その準備をしているところです。
——どれくらいの人が読んでいるか分からない中で、労を費やしてこれだけの仕事をするのは大変じゃないですか。
映画を作るのと同じですよ。作った後で何人が観るかなんてことは最初から重視していないんです。何千人、何百人が読んでいるかは分からないけど、少しでも読んでくれる人がいるならそれでいい。雑誌作りに予算なんてまったくありません。我々は「江湖の道義」としてこれをやっているんです。置かれている生態は良いと言えないけど、私は楽観しています。記事の中で何かを気に入ってくれる人がいれば、その人は将来の読者になりうるわけで、今後少しずつでも読者は増えてくるでしょう。私は、今後この雑誌がどうなって欲しいというような期待も特にしていないんです。ただ自分たちのできることをコツコツとやるだけです。
『電影作者』第6号(中国語)はhttp://pan.baidu.com/s/1pJ39OQRよりダウンロード可。
邱 炯炯(チュウ・ジョンジョン):映画監督。1977年四川省生まれ。画家として活動する傍ら、2007年からドキュメンタリー映画を制作。『マダム』 (2010)は中国インディペンデント映画祭2013でも上映された。現在はフィクションとドキュメンタリーが交錯する新作を準備中。